スイスの魅力とデメリット
スイスは非常に物価が高いというデメリットがありますが、 法人を設立していない日本の個人仮想通貨投資家にとってはこの点を十分に補う魅力があります。
以下に他国と比較しスイスのメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。
仮想通貨に関する日本の税制について
まず、他国の仮想通貨税制の前に自国の仮想通貨税制について、しっかりと理解しておく必要があります。
日本における仮想通貨の税制を理解するためには、いくつかの重要なポイントがあります。
まず、日本では仮想通貨取引で得た利益は「雑所得」として扱われます。
これには、仮想通貨を売却して得た利益や、他の仮想通貨に交換した際の利益が含まれます。
雑所得として申告する際には、総合課税が適用され、所得額に応じて5%から最大で45%の税率がかかります。
加えて、住民税が一律で10%課されるため、最高税率は55%に達します。
この税率は非常に高く、多くの日本人仮想通貨投資家にとって大きな負担となっています。
また、日本では仮想通貨取引を行う際に、詳細な取引記録を保管し、正確に申告することが求められます。
つまり、あなたの全ての取引データであり、例えば取引所から他の取引所へのトークンの移動、エアドロップの受け取りなど申告漏れがないように全て記録する必要があります。
これは、税務署が仮想通貨取引の詳細を確認できるようにするためです。
取引記録の管理は煩雑であり、多くの投資家が困難を感じています。
これらの点を踏まえ、日本の仮想通貨税制は他国と比較して非常に厳格となっており、高い税率と詳細な申告義務が特徴です。
執筆者的には、日本の仮想通貨取引に関しては、取引データの提出が義務付けられている現状を踏まえ、記録管理は個人が行うべきではなく、政府が担うべきだと考えています。
取引履歴はすべて改竄が不可能なブロックチェーン上に永遠に記録されており、アドレスさえ提供すれば、取引の内容を政府や第三者が直接確認できるため、個人が取引記録を管理し、わざわざ申告する必要はないと考えます。
これにより、申告漏れや不正確な記録のリスクを減らし、より効率的な税務管理が実現できると思います。
これは、すでに行っている国があります。
エストニアは非常に進んだデジタル政府を持っており、仮想通貨に関する取引情報を電子的に管理しています。
納税者が取引履歴を提出する必要がない代わりに、税務当局が取引所から直接データを取得し、税金を計算しています。
しかしながら、日本の現状では、税務当局がその情報を収集し、分析するためのシステムやプロセスそして規制が明確に整っていないため、個人に取引記録の保管と申告を求める形が取られています。
このプロセスが将来的には政府のシステムが整備され、より効率的な管理が実現することを期待するしかないでしょう。
日本政府は、125ページに及ぶPDFともに発表したにも関わらず、2024年度(令和6年度)の税制改正では、個人投資家(個人所得課税)の仮想通貨に関する税制は変更されませんでした。
具体的には、仮想通貨の利益に対する課税方法を総合課税から申告分離課税に変更し、税率を一律20%とする提案や、損失繰越控除の対象とする提案がありましたが、これらは見送られました。
日本人の仮想通貨投資家にとって、この税制が大きな課題となっているのは確かです。
以下の記事で、より詳細に解説しています。
日本の仮想通貨市場の成長と課題:投資家が知っておくべきポイント - FIntCrypto
スイスの魅力
仮想通貨の税制
スイスでは、個人として資産の売却によって得られた利益(キャピタルゲイン税)が非課税であるため、市民として普通に生活している方がキャピタルゲインに関する税金面では有利です。
一方で、法人としての活動には法人所得税が課されます。
スイスの法人税率は、連邦レベルで8.5%、州および地方自治体レベルで最低15%から21%の範囲で設定されています。
法人税最低税率15%、スイスは2024年施行 - SWI swissinfo.ch
したがって個人としての方が税負担が非常に軽いと言えます。
仮想通貨の普及
スイスは仮想通貨とブロックチェーン技術に対して非常に前向きな姿勢を示しています。
特にツーク州は「クリプトバレー」として知られ、多くのブロックチェーン企業やスタートアップが集まる中心地となっています。
スイスの規制当局は、イノベーションを促進しつつも、適切な規制枠組みを整えることを重視しています。
特に、2022年にはルガーノ市で、ビットコイン(BTC)、テザー(USDT)、スイスフラン連動のステーブルコイン「LVGA」を事実上の法定通貨として採用しています。
x.comLa Città di #Lugano e @Tether_to hanno annunciato oggi che collaboreranno per creare un centro di eccellenza a livello europeo per l'adozione della blockchain. L'evento è visibile su YouTube https://t.co/jh37gwGFoq https://t.co/4i4CIEDgRw @paoloardoino #Bitcoin @LuganoLivingLab
— Lugano (@luganomycity) 2022年3月3日
そして、2023年11月には、スイス国立銀行(SNB)は、SIXデジタル取引所(SDX)および商業銀行6行と協力して、ホールセール向け中央銀行デジタル通貨(CBDC)の試験運用を行っています。
CoinDeskによる最新の発表では、2024年6月にスイス国立銀行(SNB)とスイスのSIXデジタル取引所(SDX)による、ホールセール向け中央銀行デジタル通貨(CBDC)を通じたトークン化証券の決済についての調査は新たな段階に入り、今後2年間で他の金融機関や取引タイプが追加されることになると発表しました。
この柔軟な規制環境とテクノロジーへの積極的な受け入れが、多くの企業や投資家を引きつけ、スイスでは仮想通貨の取引や保有が比較的自由に行えています。
文化的側面
スイスの文化には多くの興味深い側面があります。
スイスでは4つの公用語(ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語)が話されています。
最も広く使われているのはドイツ語で、全人口の約60%以上が日常的に使用しています。
英語も広く理解され、都市部や観光地では多くの人が英語を話します。
ただし、ドイツ語の習得は、特に英語や日本語を母語とする人にとってやや難しいと感じることが多いです。
主な理由として、複雑な文法(名詞の性や格変化)、多様な動詞の活用、異なる語順、そして特有の発音が挙げられます。
しかし、ドイツ語にはロジカルなルールが多く、学習を続けることで徐々に理解しやすくなる点もあります。
適切な教材や指導者を見つけ、継続的に学習することが成功の鍵となるだろう。
スイスの主要都市(チューリッヒやジュネーブ)は、2024年も例年同様に冬季に平均気温が約-1℃から5℃、夏季には約15℃から25℃程度と、比較的過ごしやすい気候です。
チューリッヒ における 2024年夏の気象履歴(スイス) - Weather Spark
また、スイスでは、生活していく上で公共の場でいくつかの行動が失礼とされることがあります。
以下にその例を示します。
挨拶を忘れない: スイスでは、何かを頼む前に「こんにちは」(スイスドイツ語で「グリュエッツィ」、フランス語で「ボンジュール」、イタリア語で「ブオンジョルノ」)といった挨拶をするのが礼儀です。
大声で話さない: 公共の場やレストラン、公共交通機関では、大声で話すのは避けるべきです。静かに話すことが求められます。
鼻をすすらない: スイスでは、鼻をすする音は非常に不快に感じられるため、鼻をかむときはティッシュを使うのが一般的です。
時間に厳守する: スイス人は時間に対して非常に厳格です。約束の時間に遅れることは失礼な行為とされています。
目を合わせる: 話すときには相手の目をしっかり見て話すことが重要です。視線を泳がせると、嘘をついていると受け取られることがあります。
公共の場でのマナーを守る: ガムを噛むことやゴミをポイ捨てすること、爪を掃除することなどは、公共の場では失礼とされます。
これらのマナーを守ることで、スイスでの滞在がより快適になるでしょう。
日本と比べると、これらのマナーには共通点が多いことがわかります。
また、スイスの食文化にはチーズやチョコレートが深く根付いており、特にチーズフォンデュやラクレットは人気の料理です。
宗教面では、スイスの大多数がキリスト教徒で、カトリックとプロテスタントが主流です。
宗教的な祝祭日も多く、地域ごとに異なる伝統が見られます。
芸術と音楽の分野では、スイスはクラシック音楽や現代音楽で優れた音楽家を輩出してきました。
モントルー・ジャズ・フェスティバルは世界的に有名で、またスイスはダダイズムの発祥地でもあり、現代芸術にも大きな影響を与えています。
スポーツ面では、スイスは冬のスポーツが盛んで、特にスキーやスノーボードが人気です。
夏にはハイキングやサイクリングも楽しめます。
時計産業はスイスが世界的に高品質な時計製造で有名な分野です。スイス製時計は精密さと品質の高さで知られています。
公共交通機関やインフラ
そして、スイスはその清潔さと美しい自然景観で非常に有名です。
ここは生活していく上で日本人なら重要なポイントとなるだろう。
特に、スイスは環境保護に力を入れており、清潔な空気と自然の美しさを保つための取り組みが評価されています。
スイスの公共設備も非常に清潔です。
スイスの都市では、街路や公共施設の清掃に多大な努力が払われています。
例えば、スイスのニュースを取り扱うswissinfoによれば、2018年での連邦統計局のデータによるとチューリッヒでは毎日約30,000袋のゴミが収集され、公共の道路や歩道、バス停などが24時間体制で清掃されています。これは2024年の筆記時点でも継続されています。
ベルンやジュネーブでも同様に、専任の清掃チームが日々の清掃を行っています
特に観光地や主要駅にあるトイレは、管理が行き届いており、利用がある度に清掃され常に清潔です。
2024年のスイスの清潔さに関するデータは、主に環境パフォーマンス指数(EPI)や持続可能な開発報告書(SDGインデックス)などの信頼性の高いソースからも分かります。
スイスはEPIランキングで上位に位置しており、特に飲料水の安全性や衛生管理において高い評価を受けています。
また、持続可能な開発報告書では、スイスの持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みが評価されています。
Source: SDGインデックス
スイスの清潔さは、住民の意識の高さと政府の取り組みの結果です。
公共交通機関やインフラの清潔が保たれていることにより、観光客にも好評であり多くの日本人も高く評価しています。
多くの日本人が清潔さと美しさを評価することには、これ以上ない説得力があると言えるでしょう。
スイスの治安
2024年のスイスの治安は概ね良好と評価されています。
これには、日本の外務省の海外安全ホームページで危険レベルが日本と同じで0と表記されており、女性ひとりでも問題なく観光することができると言われているほどです。
しかし、過去と比較するとスイスの治安には若干の変動が見られます。
例えば、2022年には犯罪件数が10年ぶりに増加し、合計45万件となりました。
特にこの年では、デジタル犯罪や電動自転車の盗難が増加したようだ。
2024年のスイスの犯罪件数は、2022年と比較してさらに増加しているようです。
2024年3月下旬にスイス警察当局(連邦統計局)が発表した統計によれば、2023年の1年間で同国の犯罪件数は約52万件に達し、前年比で約14%増加しています。
特にヴォー州やティチーノ州での増加が顕著です。
この増加は、デジタル犯罪や電動自転車の盗難だけでなく、暴力犯罪や車両強盗、住居侵入盗などの犯罪が含まれています。
スイスは依然として比較的安全な国とされていますが、都市部では特に注意が必要です。
それでも、スイスの治安は全体的には高い水準を維持しています。
日本と比べるとスイスの一般犯罪の発生率は高いものの、適切に注意を払えば安全に過ごすことができます。
スイスのデメリット
高い物価
スイスの物価は非常に高いです。
これは、世界中の都市や国の様々な生活に関するデータを提供するオンラインプラットフォームであるNumbeoのデータによるものです。
※為替レートによる変動があるため実際の価格保証はありません。
チューリッヒでは生活費がドイツの約69%、アメリカの約21%、カナダやオーストラリアの約43%高く、物価もこれに比例して高くなります。
例えば、スイスでは食料品の価格が高く、1リットルの牛乳が約2.5フラン(約300円)、1キログラムの鶏肉が約25フラン(約3000円)です。
公共交通機関の月額パスは約80フラン(約9600円)で、医療費も高額ですが、質の高い医療サービスが受けられます。
スイスの物価が高い主な理由は、平均賃金の高さ、優れた生活水準、高い不動産価格、輸入依存と高い税率、規制などです。
tradingeconomicsが提供する、スイスの最新の消費者物価指数(CPI)データによると、2024年6月のCPIは107.70ポイントでした。
Source: tradingeconomics.jp
スイスの連邦統計局で確認したい場合はこちら
これは、前年同月比で1.3%の上昇を示しています。
また、コア消費者物価指数(食品とエネルギーを除く)は105.50ポイントで、前年同月比で1.1%の上昇となっています。
スイスのCPIは、住宅とエネルギー(27%)、医療(18%)、交通(10%)、食品と非アルコール飲料(12%)などのカテゴリーで構成されています。
スイスとドバイの物価比較
ビジネスや投資家にとって最も人気の国がドバイです。
ドバイがビジネスや投資家にとって人気の理由は、税制優遇措置、迅速なビジネス設立手続き、透明な法制度、優れたインフラ、地理的優位性、快適な生活環境、多様なビジネスチャンス、自由貿易ゾーンの存在、そして政府の強力なサポートによるものです。
これらの要因が組み合わさり、ドバイはグローバルビジネスの中心地として非常に魅力的な場所となっています。
スイスとドバイの2024年の生活費、物価、家賃の比較
スイス
生活指数: スイスは世界で最も生活費が高い国の一つで、生活指数は約121.23です。
物価: スイスの物価は非常に高く、例えばビッグマックは約804円、ランチの平均価格は約2,705円です。
家賃: ジュネーブでは1LDKのアパートの家賃が月約19万円です。
ドバイ
- 生活指数: ドバイの生活指数はスイスより低いですが、依然として高い水準にあります。
具体的な指数は公開されていませんが、生活費は月約20〜25万円とされています。
物価: ドバイの物価も高めで、ビッグマックの価格は約1,228円、ランチの平均価格は約4,093〜5,300円です。
家賃: ドバイのダウンタウン地区やマリーナ地区では、1LDKのアパートの家賃が月約30.5〜34万円です。
スイスとドバイのどちらも高い生活費を要しますが、スイスでは特に物価が高く、ドバイでは家賃が高い傾向があります。
どちらに住むかを考える際には、これらの要素を比較することが重要です。
比較と結論
- 食費: スイスの方が食費が高く、特に外食やファストフードの価格が目立ちます。
- 家賃: ドバイの方がやや安いですが、どちらも高額です。
- 生活費全般: スイスは全体的に生活費が高く、特に日常的な支出が大きいです。
ドバイは観光地としても人気があり、ホテルや観光アクティビティの費用が高くなることが多いです。
一方、スイスは日常生活の費用がドバイよりも高額です。
しかし、スイスはドイツに非常に近いため、ヨーロッパ各国への旅行も楽しむことができます。
ドイツは地理的にヨーロッパの中心に位置しており、交通の利便性が非常に高いです。
ドイツを拠点にしてヨーロッパ旅行を楽しむ方々は多くいます。
もしスイスの高い物価が問題であれば、ドイツへの移住も検討する価値があります。
ドイツでは仮想通貨で得た利益に対するキャピタルゲイン税が1年以上保有した場合には免除され、1年未満で利益を確定した場合でも最大税率は20%です。これは米国の仮想通貨税率と同じです。
ドイツは生活費が比較的安く、公共交通機関やインフラも充実しているため、ヨーロッパ各地への旅行が容易です。
最終的には、スイスの利便性や税制の優位性を重視するか、生活費の低さを重視してドバイを選ぶかは、個々の優先事項によって決まります。
いずれにしても、仮想通貨の個人投資家にとってスイスは特に魅力的な移住先となり得るでしょう。
スイスに移住するには?
スイスで長期滞在や就労を希望する場合、ビザや滞在許可証、労働許可証の取得が必要です。
ただし、スイスはビザと許可証の取得が難しいとされています。
これらのプロセスは時間がかかり、手続きも複雑ですが、正しい手順を踏めば取得が可能です。
- ビザの取得: スイスに長期間滞在するためには、まずビザを取得する必要があります。
ビザの種類や申請手続きは、滞在の目的や期間によって異なります。
スイスでビザや許可証を取得するプロセスは確かに複雑で時間がかかりますが、適切な手続きを踏めば取得可能です。
スイスで永住許可証(C許可証)を取得するための、労働による申請ではなく、個人投資家としてのプロセスがあります。
以下に、その一般的なプロセスと要件を説明します。
最初の滞在許可:
- スイスに長期滞在するためには、まずB許可証(長期滞在許可証)を取得する必要があります。これは通常、仕事や独立事業のために発行されますが、個人投資家としても申請が可能です。
滞在期間:
EU/EFTA加盟国の市民権を取得した後にスイスのC許可証を申請すれば、5年で取得できるのではないかと考える方もいるかもしれません。
実際、それは可能です。
しかし、スイスの移民法の要件を考慮すると、日本は二重国籍を認めていないため、日本国籍を保持したままEU/EFTA加盟国の市民権を取得することは難しいです。
日本国籍を放棄してEU/EFTA加盟国の市民権を取得すれば、スイスのC許可証を5年で申請することができます。
ただし、EU/EFTA加盟国の市民権を取得するプロセス自体が複雑で時間がかかるため、スイスのC許可証を目指す場合、スイスで10年間居住する方が現実的な選択肢となるでしょう
経済的自立:
- 申請者は経済的に自立していることを証明する必要があります。これは、十分な収入や資産を持ち、スイスでの生活費を自己負担できることを意味します。
犯罪歴のないこと:
- 申請者は重大な犯罪歴がないことが求められます。過去の犯罪記録は申請プロセスに影響を与える可能性があります。
統合要件:
- スイス社会への統合度が求められます。これは、スイスの言語(ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語)のいずれかに対する言語能力証明や、地域社会への参加などが含まれます。
健康保険加入:
- スイスでの滞在中は、適切な健康保険に加入していることが必要です。
スイスの各カントン(州)によって具体的な要件やプロセスが異なる場合があるため、詳細については居住予定のカントンの移民局に直接問い合わせることが重要です。