
暗号資産市場において、量子コンピューティングの進展がもたらす影響に注目が集まっている。
ソラナ(Solana)の共同創設者であるアナトリー・ヤコヴェンコ氏は、米サンフランシスコで開催された All-In Summit のパネルディスカッションにて、「量子コンピュータが2030年までにビットコインの暗号を破る可能性は50%に達する」との見解を示した。
x.comSolana’s Anatoly Yakovenko on Crypto's Next Era: Quantum, AI, and the Future of Money
— The All-In Podcast (@theallinpod) 2025年9月18日
(0:00) Introducing Solana Co-Founder Anatoly Yakovenko
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ヤコヴェンコ氏は特に、AI(人工知能)の進化が量子研究の加速要因となっている点を強調。
AIが研究成果と実装の時間差を縮めることで、量子ブレークスルーが想定以上に早く訪れる可能性があると指摘した。
現在、ビットコインはSHA-256と楕円曲線デジタル署名アルゴリズム(ECDSA)に依存しているが、これらは量子コンピュータに対して脆弱とされる。
ヤコヴェンコ氏は「ビットコインは量子耐性のある署名スキームへと移行する必要がある」と警鐘を鳴らし、GoogleやIBMが進めるフォールトトレラント型量子コンピュータ開発のロードマップを例に挙げながら、早期対応の重要性を訴えた。
一方で、量子リスクが顕在化した場合でもビットコインが直ちに崩壊するわけではないとの見方も示した。
同氏によれば、仮に特定の大企業が総供給量の20%を保有し、その企業が破綻したとしても「ビットコインはオープンかつグローバルな市場構造の中で回復力を維持できる」としている。
実際、今年に入ってからは企業によるBTCの蓄積が加速しており、MicroStrategy(現Strategy)は60万BTC超を保有。
さらにMetaplanet、MARA Holdings、XXI、GameStopなども相次ぎ参入し、保有規模を拡大している。
もっとも、現時点の量子コンピュータは依然として実験段階にあり、ECDSAを実際に破るには量子ビット数やエラー率などの課題が大きい。
したがって、ヤコヴェンコ氏の言葉は「確定的な予言」ではなく、あくまで「可能性の提示」と捉えるべきだろう。
2030年までに量子コンピュータがどこまで進化するかは不透明だ。
しかし、暗号資産業界において量子耐性暗号への移行議論を早期に進める必要性が高まっていることは間違いない。

